東京地方裁判所 昭和37年(ヲ)72号 決定 1962年2月14日
決 定
東京都品川区大井坂下町二七二一番地
申立人
藤田厚夫
右代理人弁護士
世良田進
同都大田区仲蒲田三丁目一二番地
相手方
小島富次郎
右当事者間の昭和三七年(ヲ)第七二号強制執行の方法に関する異議申立事件につき次のとおり決定する。
主文
本件異議申立を却下する。
申立費用は申立人の負担とする。
理由
本件申立の趣旨は「相手方より申立外関定一に対する東京地方裁判所昭和三四年(ヲ)第九三八号執行方法に関する異議申立事件の和解調書に基き氏事訴訟法第七三一条第五項の規定により別紙目録記載の物件に対してなした強制執行はこれを許さず。申立費用は相手方の負担とする。」との裁判を求めるにあり、その理由とするところは
一、相手方の委任した東京地方裁判所執行吏西直吉は前記債務名義に基き東京都大田区仲蒲田三丁目一二番地の八宅地二〇四坪一合一勺及び同番の三の地上に存在する申立外朝日産業株式会社所有の鉄屑等有体動産を、債務者関定一が引取りを怠つたことを理由として昭和三六年一二月一一日民事訴訟法第七三一条第五項の規定による遺留品換価処分として競売に附し、申立人は右鉄屑類全部を代金一八一万円をもつて競落し、即時代金を支払つてその所有権を取得した。
二、ところが、西執行吏から、右競売には次の条件が附けられているからその履行を求める旨告知された。
(一)、競買人は競落物件を昭和三六年一二月二一日限り右土地上から搬出持ち去ること
(二)、右期間中に搬出持ち去らない残物件は再競売に附し、その代金は返還しないこと
三、しかしながら申立人は右のような条件が附けられていることを何等関知せず、かかる条件が附けられているならば買受の目的を達することができない。なるほど執行調書には右事項が告知された旨記載してあるが、申立人がこれに署名したときはこの記載はなかつた。
四、かりに右条件の告知があつたとしても、競落人をして一〇日以内に持ち去りを命じ、残存物件を再競売に附しその代金を没収するが如きは不当であつて到底許さるべき競売ではない。
五、しかるに西執行吏は右条件を履行しないとの理由で、競落物件を再競売に附さんとしているから、申立人は買受の目的を達するため本件申立に及んだというにある。
然しながら申立人の異議は左の諸点において失当である。
(イ)、申立人は西執行吏がなした競売による換価処分の不許(取消)を求めているのであるが、その理由として主張するところは、申立人が当該競売により取得した有体動産の所有権を再売によつて失うことを慮り、右競売に附せられたという条件の存在又は効力を争うというにあり、異議の適法な理由となすに足りない。
(ロ)、申立人は異議理由二記載の条件告知がなかつたというが、執行記録中の競売調書によれば右条件が告知されたことの記載があり、加うるに右競売は土地明渡の強制執行に附随する遺留品換価処分に外ならないから、競落物件の搬出持去りによる保管場所の明渡を必要とすることはいうまでもない。従つて、執行吏が右のような条件を附しかつこれを関係者に告知したであろうことは優に推認し得るところであつて、この点に関する異議も理由がない。
(ハ)、次に異議理由の四の主張も、かかる条件が告知されたと認むべきこと前段説示のとおりである以上、このような売却条件を了知して競売に参加し競落した申立人として、後日これを攻撃することは妥当ない。のみならず、遺留品換価手続の性質上このような条件を附けることはむしろ適当でこそあれ不当というを得ない。
以上説示したとおり本件異議申立は理由がないからこれを却下すべきものとし、申立費用は申立人の負担として、主文のとおり決定する。
昭和三七年二月一四日
東京地方裁判所民事第二一部
裁判官 近 藤 完 爾